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萩谷 茂「あのころ」
あのころ、空は今よりもずっと広くて、雲はもっともっと高いところにあった。空気はもっと透明で、一日はもっともっと長かった。
いつでも田んぼのにおいがして、川の流れる音を聞いていた。
あのころ、大好きだった夏休みの遊び疲れた午後は、開け放った家の中で昼寝が日課で、遠くで聞こえるセミの声と、聞き覚えのある仲間の声を聞きながら眠りに落ちていった。
すーっと吹き抜ける、心地よい風…
あのころ、時間はもっとゆっくりと流れ、終わることのない時間の中にいた。
記憶の中から消えつつある、そんなあのころの感覚をずっと自分の中に留めておくための、僕の記憶装置こそが写真なんです。
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